1998/11/2(月)[21w4d] 乳

腹が腹が、と言い続けている私であるが、腹ほどの劇的変化は見られないものの胸もやはり肥大しているのだった。そもそも、体型の変化は胸の方が先であったと記憶している。腹が出たか出ないかといった頃には、胸の方は既に普段の下着では間に合わなくなっていた。
しかし、細身の服を着た時に窮屈に感じる程度では、日々巨大化する腹のインパクトには負けてしまっていたのだ。
が。
最近、どうも胸のあたりが冷たくなるとは感じていたのだ。見ると、どうやら濡れているようだ。胸が濡れるといえば、思い当たる節は一つしかない。まさかと思いながら、ものの試しに搾ってみると白い液体が出てきた。これは、どうみても乳だ。
翌朝にいたっては、起きると服の胸の部分が丸く濡れていたのだった。
脂肪の固まりだとばかり思っていた胸がいつの間にやら母乳製造器に変わってしまったらしい。 身体は着々と母となるべく準備を整えているのだなあと感心するのであった。気持ちの方は心構えも覚悟もなーんにも出来てないというのに。


1998/11/5(木)[22w0d] 酔っ払う妊婦

生まれてこのかた突き指と捻挫と鼻血と腰痛には縁のなかった私であったが、最近その一角が崩れてきたのであった。腰が痛むのである。
寝転がっていて起き上がると痛む。座っている処から移動しようと四つん這いになった途端に痛む。寝返りを打った拍子に痛む。どうやら、体勢が変わった時に腰骨のかみ合わせが悪くなった為に起こると思われる。これって腰痛?
何せ生まれてこのかた腰痛知らずなので、こういう状態を以って腰痛と呼んで良いものなのかはよくわからないのである。
いずれにしろ私が唐突に「アイテテテテ」と言い出すので、よーいちろーにはかなりの驚愕を与えるものであるらしいのであった。
ところで、私の体調に関してはやたらと慎重派であるよーいちろーであるが、何故かちっとも動じないものが1つあるのであった。アルコールである。
不思議な事に、妊娠に気づいた頃から私はあんまり酒を飲まないようになっていた。ビールが美味しそうだなあとは思うものの、飲んでみるとやたら苦く感じたりして飲めなかったのだ。もしかしたら悪阻の一種だったのかもしれない。
最近はまた多少は飲むようになったのだが、数ヶ月の酒断ちのせいか、すぐに回ってしまう。面白い事に、私はアルコールは肩と腕にくるのであった。で、「わ、肩が酔ってる〜」「腕が、腕が」などと騒ぐのであるがよーいちろーは気にも留めない。
今日も今日とてワインを飲んでほろ酔い加減になり、「腹の中は大丈夫だろうか」と言ってみたところ、妙に自信たっぷりに「大丈夫!」と請け合ってくれたのであった。


1998/11/10(火)[22w5d] 腰痛

腰痛が激しい。
昨夜などはとにかく動く度に悲鳴を上げていたのであった。声を上げる度によーいちろーが心配するものだから、ちょっと気を使って黙って耐えていたら、今度は声が出ないほど痛いのかと勘違いされる始末。
ものの本によれば妊婦に腰痛は付き物のようであるが、特に筋力の弱い人に現れ易いようである。万年運動不足の私にはさもありなんと思われるのであった。
腰痛体操なんぞというものが書いてあったので試してみたものの、その体操の動きでまた痛くなる有り様。困ったものである。
ところでこの腰痛であるが、昼間は全く出てこないのである。朝起きて会社行って帰って夕飯食べる処までは何ともない。で、夕飯が終わってゴロゴロしたあたりからアイテテテが始まるのである。
やっぱり床の上の生活が腰に負担をかけるのであろうかと考察するのであった。いや、それより何かというとゴロゴロする癖を直した方がいいのか。


1998/11/12(木)[23w0d] 破戒妊婦

定期検診である。経過は順調。頭臀長は15cm。
推定体重は623gだそうである。推定の割にはやたらと細かい。
他に頭の大きさと大腿骨の長さも測り、それをグラフで正常値内にある事を示してくれる。が、頭は正常範囲内でも平均以上を示すのに、大腿骨は平均以下なのであった。どうやら頭でっかちの短足のようだ。同情を禁じ得ない。
さてさて胎児は順調であるものの、妊婦の方は体重増えすぎのチェックを入れられてしまった。助産婦さんだか看護婦さんだかが実体験を交えて太るとよろしくないことを説く。彼女は20kg増えて3日陣痛が続いたそうな。参考にと聞いてみた。
「体重ってどの位増えても良いんですかねえ?」
「5kgかなあ」とのお答え。
胎児だけで少なくとも3kg増えるわけだから、これはかなりマズイ。というより、体重減らさなきゃいかんではないか。
「う、それはキツい...。」
「10kgって思うと15kgまでいっちゃうからね。」
成る程。「5kgと思っておいて10kgまでOKってことですね。」私の頭の中ではすでに目標体重は+10kgとなってしまったのであった。
更にいろいろ話しを聞いていた処、彼女の口から意外な言葉が飛び出した。
「コーヒーは飲んでないですよね。」
え。それはまるで飲まないのが当たり前とでも言いたげな。 「......駄目ですか。」
「カフェインは止めておいた方がいいですね。」
でも、何を見ても一日一杯位は全く問題なしって書いてあるけどなあ。私は心静かにこの忠告は無視する事に決めたのであった。


1998/11/17(火)[23w5d] 欣喜雀躍

因みに、腹の中身は私とよーいちろー双方の親にとって初孫となるのである。
そもそも、孫が可愛いというのは年を取って脳が壊れかけている所為だ、という説を昔何かで読んだ事がある。また、育てる責任がないからだという説もある。いずれにしろ孫と言うのは無条件に可愛いらしいのだ。
私の母親は何と言うか感情の豊かな人である。例えば、マラソン中継で走るランナーを見て泣ける人なのだ。そういう人だから初孫ともなればその喜び様も尋常ではあるまいと思われる。幸い私の実家は遠い為、その様子はたまに掛ける電話ごしに感じるのみであるが、出かける度にベビー用品売り場をうろついているであろうことは想像に難くない。
義母も非常に喜んでくれているが、少なくとも私の目には落ち着いているように見えていたのだった。
ある日家に帰ると、居間の壁になにやら貼ってある。新聞広告の切り抜きのようだ。
「ねえねえ、あれ。」よーいちろーを小突いてみる。
「うわ。....盛りあがっとるばい。」
それは、母親と小さな子どもが顔を寄せ合っている写真なのだった。
「......きっと、知り合いなんだよ。うん。そうじゃないかな。」
「甘い!ぜっっったい!ない!!」言下に否定されてしまった。
義母に聞いてみたら一言。「可愛かやろぉ。」
人知れず義母もまた盛り上がっていたらしいのだった。でれでれなのである。
まあでも喜んでくれているのはとてもうれしい。でもって、心配してくれるのも非常にありがたい。ありがたいのだが、ちょっとタオルを干したくらいで大騒ぎするのはどうかと思う。いや、へその緒が絡むという俗説がある事くらいは知ってるけど。でも、血相変えて「やめてやめて。お願い〜。」って抱きつかれるのはどうも。


1998/11/24(火)[23w5d] はらはりはれはろ

前回の定期検診の時、医者は言った。
「今日はお腹が柔らかくて非常によろしいです」
それはつまりお腹が張っていないと言う事らしい。腹が張るのはよろしくない兆候なのである。早産になったりするのである。
因みに私は未だに「腹の張り」というものが認識できない。なのでこれは朗報であった。腹が柔らかければいいのだな。うんうん。硬いと張っていてよくないのだ。ふむふむ。
「次は4週間後。でも、お腹が張るようだったらその時に来るように。」と帰り際に医者は言ったものだ。
今考えれば、その時に腹の硬さを自分で確かめておけば良かったのだ。折角そこに柔らかい腹のサンプルがあったのだから。
おかげでここ一週間ほど腹を触っては「これは硬いのか?」と悩む日々が続いているのであった。
我ながらあほである。


1998/11/26(木)[25w0d] 心配症

安定期に入った後は定期検診は通常4週間毎に行われる。良く考えたら、私は4週間後と言われてその通りに行った事はないのだった。
病院に行って2週間位経つと、何やら心配事が起きてきて結局病院に行ってしまうのだ。それの繰り返し。要するに医者の「大丈夫」という言葉を聞いて安心したくなるらしいのである。
そういえば、前に強迫神経症だかの人の日記に同じような事が書いてあるのを見た事がある。病院に行った後の1週間は落ち着いているのに、その後だんだん症状がぶり返してくるそうな。
自分では「なるようにしかならん」と思ってるし、ちっとも胎児に良い事なんかしてないのに、やっぱり心配はしてるのであった。面白いものである。
で、前回から2週間目の今日、やっぱり病院に行ったのだった。但し今日は「腹が張っている、ような気がする」というちゃんとした名目があるのだ。しかも、ちゃんと医者にも少し張り気味であるというお墨付きをもらったのだ。張り止めの薬ももらったのだ。来週また通院しなければならないのだ。
困ったものである。


1998/11/30(月)[25w4d] 贅沢な悩み或いはバチ当たり

会社にいたら電話がかかってきた。「自宅からですよ」と聞いてちょっと悪い予感はしたのだ。
「今日は普通に帰れると?」義母だった。
???「そのつもりだけど。」???
「あ、そう。」なんだか声が弾んでいる。「そしたら雨の降っとるけん」
わっ、しまった。ヤバイ。
「迎えに来るよ。」
「よか!傘はもっとる!!バスに乗る!来んでよか!!」
「来るけん。会社の裏に、6時過ぎね。」
「いらん。よかって!ぜーーーーーっったい、いらん!!」
「いーや。来るけん。じゃあね。」がちゃ。
切られてしまった。
今日は朝から雨降り。私はちゃんと傘を持ってきてるのである。暴風雨というわけでもない。
会社から最寄のバス停までは2〜3分。降りてからは家まで約5分。バスでは確実に座ることが出来る。
この条件でなんで迎えに来ようだなんて考えるのかね、義母よ。
そりゃあ腹の中身は大事なお孫様かもしらんが、とばっちりを受ける私の身にもなってくれえ。
はぁぁ。


前の月の日記へ
次の月の日記へ
ある妊婦の日記INDEXに戻る